職場での忘年会が無くなって久しいが、今年も公式な忘年会は無かった。
それがどうということは無いが、季節の風物詩が一つ無いような、パズルが1ピース足りないような気がするのは、気のせいではない。
私的忘年会と称して、ひとり呑みに行くことにした。
独りで楽しむと考えたら、日本酒が旨い店が良い。
歳を取ったせいか、やはり日本酒が一番好きなんだと最近思っている。
香り、舌触り、喉越し、どれもがしっくりくるのは日本酒だったようだ。
日本酒好きだからといって、純米大吟醸が好きだという訳でもない。
むしろ純米酒のべたべたした感じがちょっと苦手で、むしろ本醸造の方が旨いと思う。
仕事が早く上がれた日に、ふらっと立ち飲み屋に向かう。
まだ6時台のせいか、すんなり入れる。
そんなに広くない店だが、立ち飲みなので、狭くは感じない。
入口近くのテーブルを案内され、荷物を置いたら、カウンターで酒を注文する。
受け皿の上に置かれたグラスになみなみと日本酒を注いでくれる間に、あてを選ぶ。
あてはレンジで温めて、テーブルに運んでくれるので、グラスの酒をこぼさないようにテーブルまで運ぶ。
日本酒の一口目は、グラスを置いたまま口を近づけて迎えに行く。
香りが鼻に抜けて、舌に水のように広がる。
しばらく余韻を楽しんで、二口目はグラスを持って口に近づける。
やっぱり美味い。
そうこうしているうちに、温められたあてが届く。
酒とあての関係は、飲み物と食べ物ではないと思っている。
日本酒はそれだけで十分に美味いし、あてはあてで美味い。
例えば、ハンバーガーとビールは、ハンバーガーとコーラに置換可能だけれど、ハンバーガーと日本酒には置換できない。
酒を味わって、あてを味わって、外を眺めたり、点いているTVの画面を眺めたり、スマホをいじってみたり、何かしているようで何もしていない、何もしていないようで酒を味わっている、そんな時間が過ぎてゆく。
別に誰かと話したいわけでもないし、がつがつと何かを食べたいわけでもない。
この頃、ようやく自分なりのひとり呑み、という時間の使い方を知ることができたように思う。
別の日に、久しぶりに友達から連絡が来る。
忘年会でもやろうという。
駅で待ち合わせて、夜の街へと繰り出す。
だが、このトップシーズンに飛び込みで入れる店なんて少ない。
何軒か入れず、結局、行きつけの店に友達を連れて行った。
同い年の初老の男同士で話すことと言えば、定年後の生活の話と健康の話になった。
それぞれがそれぞれの問題やら悩みやらがあって、ともあれ生きていかなければいけない、ということなのだ。
別に愚痴をぶちまけるわけでもなく、自慢やマウントやそういったものとは無縁で、ただただそういったなんてことない話を2時間も話していた。
独りで呑みに行く店に、友達と長居したのもまた新鮮だった。
誰かと呑みに行く、というのも、夏以来だったし、忘年会も何年ぶりだったか。