日々のぼんやり

何か書いてみる。書いてから考える。

RPG会社

リアルな昔話をするのは、若者には真似できない老人の特権だというので、臆面もなくしてみる。

それはみんなが聞きたい話かどうかは知らない。

学生から社会人になったからといって、社会の何が分かっているのかというとさっぱり分かっていなくて、バイトで立場が人の言うことは聞くものだということは何となく分かっていたので、会社というところでも上司という人たちの言うことにはとりあえず聞いておくことにした。

会社というものに潜り込むためには入社試験というのがあって、大学で学んだこととは全く関係の無い、一般知識的なものや知能試験的なものでふるいにかけられるのだけれど、それで落ちた奴というのは聞いたことが無い。

その後、段階を追った面接があって潜り込むことができたのだけれど、自分のあずかり知らないところでふるいにかけられているという仕組みは、たぶん選ばれた人という意識を育てるための仕掛けなのだろう。

なぜ自分が選ばれたのか、ということよりも、選ばれたのだから期待に応えなければいけない、というゲームが始まるのが、会社というフィールドでのルールの一つらしい。

そんなルールは知らされることも無いし、もしかしたら各ステージにいる先輩、上司といった登場人物たちと会話をすることで、手に入れることができるかもしれない。

社会人になって会社で働く、ということは、各ステージで登場人物たちと会話して、アイテムを集めて、敵キャラを倒していく、というRPG世界だと考えても良いかもしれない。

敵キャラが何かは知らない。

自分の場合、そんな風に教えてくれる人がいなかったので、とりあえずアイテム集めをしていたような気がする。

資格試験に合格し、アイテムを身につけていったが、あまりステージは変わっていなかったのは、倒すべき敵キャラを見ていなかったし、重要そうな登場人物たちと会話をしていなかったように思う。

それがダメだとか、失敗した、と言っているわけではなくて、RPG会社をそんな風に楽しんでいたという昔話だ。

それに、その頃の業界的に個人スキルを身につけて、市場価値を高めようという呪文が流行っていた。

市場価値って何だよ、それで何がしたいんだ、という質問は受け付けない。

とりあえずコインゲットしていかないと、RPG会社は続いていかない。

RPG会社のルールメーカーがどこにいるのか知らない。

選ばれた勇者たちは、チームを組んでRPG会社の中で活躍することを求められる。

チームは無作為に選ばれているかというとそんなこともなく、どうやらコネのようなものが影響しているらしい。

俺あいつ知っている、的なコネ。

だいぶ長い間、知り合いに仕事を回す的なことは悪徳だ、という風潮があったように記憶している。

汚職事件やら何やらが喧伝されて、公平であること、透明性が高いことが美徳だというルールが何となくあったような気がしている。

だがいつの間にか、そのルールは書き換えられている。

当事者間で納得があれば良くて、コネや人脈があることが、個人スキルの中に組み入れれて、市場価値という曖昧なものより、手っ取り早く金のなる木が求められているように思う。

そんな話、社会人になったばかりの当時の自分は耳を傾けたかというと、絶対に聞かない。

誰かに聞かせてくれと言われたことも無い。

だが、もしかするとRPG会社に入ろうとしている勇者や、出口の分からないステージで彷徨っている勇者がいたら、この話は役に立つだろうか。

役に立つかどうかは分からないけれど、モブキャラのつぶやき程度にでも書いておこうと思った。

昔話は老人の特権だからな。